CFOメッセージ

バランスシート重視の経営へシフトし、
2027年度末のROE8%を着実に達成していく

王子ホールディングス株式会社
専務執行役員CFO
大島 忠司

新中計:2027年度末にROE8%を達成する

2025年5月に発表した2027年度までの新中期経営計画では、これまでの当社のPL重視の経営の在り方を根本から見直し、資本効率の改善に重点を置きました。よってKPIから売上高を外し、最重要KPIは2027年度末にROE8%を達成することとしました。ROEは長期的には10%への到達を目指します。

2025年3月末時点で4.3%のROEを、8%の水準に到達させるために、利益の拡大と自己資本のコントロールを同時に進めていきます。

2027年度の営業利益目標は1,200億円、親会社株主に帰属する当期純利益目標は800億円です。利益成長に向けては、「価格転嫁」「低収益性事業の構造改革」「高付加価値品へのシフトとグループ営業体制の強化」「安定操業とコストダウン」に力点を置きます。その着実な実行を目的に、2025年4月にCxO制を導入しました。従来の縦軸に加え組織横断的な体制とするための体制強化ですが、私自身もこれまでには入ってこなかった新たな情報を得る機会が増え、横串での連携強化が収益の積み上げに寄与していく手ごたえをすでに感じています。

一方、ROEの分母となるエクイティに関して鍵となるのが、2027年度までに自己株式取得1,200億円、配当性向50%を打ち出した株主還元です。営業利益が変動しても自己資本をコントロールすることで、ROE8%の着実な達成を図っていきます。また、グループ内には、300社以上のグループ会社があり、連結対象会社は200社以上あります。グループ会社のバランスシートについても今後はより精査をしながら、非コア資産の売却を加速させ、資産のスリム化を図り、棚卸資産の圧縮を強力に進め、運転資金の削減を図ります。その一方で、金利上昇リスクや財務健全性を勘案した上で、レバレッジを利かせながら、借り入れについても積極的に活用することで資本コストの低減を図ります。

財務健全性指標であるネットD/Eレシオについては、前中計での0.7倍から、レバレッジを利かせて1.0倍以内に目安を拡大します。借り入れを積極的に活用はするものの、金利のある世界になりました。よって現状の格付けを維持することを意識しつつ、安易に借入金を増やすのではなく、資産の売却によるキャッシュ・インとのバランスなども見極め、その時々で最も有利な調達方法・条件を選択しながら柔軟に進めていく考えです。
現状、当社のPBRが1倍を下回っていることは私自身も強く意識しています。まずはROE8%のラインをしっかりと達成することが、PBR回復につながる起点になると考えます。

株主還元の考え方

株主還元のうち、配当性向に関しては、安定配当をベースとしながら、資本構成を見直し、自己資本の適正レベルを勘案した結果、現時点では50%の水準が適正だと判断しています。今後の利益成長と、2027年度までに1,200億円の自己株式の取得を通じて発行済株式数も減少しますので、1株当たり配当金は増えていく計画です。なお、株主還元に関しては、安定的な還元が重要だと考えていますので、一時的な業績悪化に伴って安易に変更することは考えていません。

キャッシュ・アロケーション

財務戦略においては、成長投資や研究開発の資金を継続的に確保しつつ、資本構成を見直し、株主還元の強化を図る形でキャッシュを分配していくことが重要です。

営業キャッシュ・フローは新中計の3年間で約5,000億円を見込んでおり、それ以外のキャッシュ・インとして、政策保有株式の売却450億円、退職給付信託株式の売却210億円、さらには賃貸不動産の売却や、借り入れなどを想定しています。

これらを原資に、3年間で研究開発投資に500億円、成長投資に2,700億円を振り向け、株主還元には前述のように配当性向50%を維持しながら自己株式の取得に1,200億円を振り向け、強化を図る予定です。また、対象を厳選する形で維持更新投資に2,200億円を充当する計画です。

研究開発投資に関しては、将来に向けた事業ポートフォリオの転換を図る中で、サステナブルパッケージや木
質バイオマスの領域では、これまで以上の投資が必要と認識しています。前中計3年間での研究開発投資約330億円に対し、新中計では500億円を計画していますが、不足ならば将来の事業に帰する研究開発投資はさらに増額することも念頭に置きながら、しっかりと投資を進めます。また、成長投資に関しては、投資が止まれば当社の将来の成長は望めないといった強い意識を持って、M&Aも含めて新たなビジネスの開拓に積極的に投資をしていきます。なお、この2,700億円の成長投資には、すでに発表した環境行動目標に沿って森林の取得、2027年度から順次、石炭ボイラをLNGへと燃料転換する投資も含めています。

事業ポートフォリオ転換に向けた財務戦略

事業ポートフォリオに関しては、EBITDA、ROIC、営業利益率などの指標を絡めた明確な社内基準をもとにモニタリングをしており、低収益性の基準に抵触した事業は、再建案の策定と実行の進捗をモニタリングした上で、継続、撤退・売却・閉鎖などの方向性を判断します。低収益性事業からの脱却と成長投資への経営リソースの投下を通じて、筋肉質な経営体質へと転換していきます。

投資や撤退基準に関しては、厳格なハードルレートを設けて判断しています。WACCを上回るROICの創出は最低基準であることは言うまでもありません。なお、株主資本コストに関しては2023年12月に約6~7%と公表していますが、WACCや事業別ROICは、社内で算定しているものの対外的に開示していません。

すべての投資判断にはCFOの私が意見を付与します。投資リスクを洗い出し、リスクテイクする部分と回避する部分とをしっかりと見極め、リスクに見合った投資かどうか、シビアに判断し、「攻めのガバナンス」と「守りのガバナンス」のバランスを追求していきます。

今後の成長ドライバーと位置づけている海外での投資についても、基本は国内と同様に、リターンを得られるかどうかを判断して意思決定します。注力エリアのインドや東南アジアでは、カントリーリスクも勘案しながら、将来的には既存のハードルレートがROEへの寄与という点で適正かどうか、今の運用を見直すことも検討していきます。

ステークホルダーへのメッセージ

私は機関投資家をはじめとするステークホルダーの皆様とのエンゲージメントの機会をとても大切に考えています。ステークホルダーの皆様からのご要望・ご意見は、経営トップを含む社内ですべて共有しております。

新たに打ち出した中期経営計画では、これまでとは異なり、資本効率の改善に重点を置いた経営を標榜しています。CFOとして、引き続き透明性の高い情報公開と積極的な対話を通じて、ステークホルダーの皆様との信頼関係を強固にしていきたいと考えておりますので、変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。