リスク管理のフレームワークと体制
王子グループは、「王子グループ企業行動憲章」に掲げる高い倫理観にもとづいた企業活動を推進し、適切なリスク管理を実践しています。事業展開地域の急速な拡がりに合わせて、グローバルにリスク管理体制を強化し、事業の継続と安定的発展を担保します。
王子グループは、取締役会による整備・監督のもと「グループリスク管理基本規程」を定め、次の流れでリスク管理に取り組んでいます。
王子ホールディングス取締役および執行役員は、管掌する事業・部門におけるリスクに関するグループ経営会議への報告責任を持ちます。重要なリスクについては、取締役会に報告されます。
また、王子ホールディングス取締役会は、リスク管理の有効性について、毎年評価を実施しています。

王子グループのリスク管理体制は下図のように構成され、監査部門とは独立して運営されています。監査役会および内部監査部は、リスク管理状況についても監査を実施しています。

王子グループの財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクを、長期的な課題に対するリスク、グループ経営戦略に関するリスク、事業遂行の過程で発生するリスクの3つに分類し、以下の対応策を取っています。
各アイコンはサステナビリティ重要課題を表します。
リスク項目 | リスク内容 | リスクへの主な対応策 | |
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長期的な課題に対するリスク |
気候変動 |
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) | |
パンデミック
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新型コロナウイルスと同様な感染症の世界的拡大により、社員の健康被害や操業の一時停止などが生じるリスク |
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グループ経営戦略に関するリスク |
イノベーションの進展による構造的な需要の変容
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DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の動きが人々の生活様式や企業活動に大きな変化をもたらし、構造的に需要が変動するリスク |
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需要の変動 |
国内における景気の変動や人口の継続的な減少などにより、製品の需要が減少するリスク |
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国際市況の変動
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原燃料調達価格が、需要動向や各国の貿易政策の変化、戦争等の影響を受けるリスク 各種パルプの販売価格が、国際市況価格の影響を受けるリスク |
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海外事業 |
事業進出している海外の地域で、戦争、政治・社会情勢の不安、経済成長の鈍化、法規制・税制等の改定、金融情勢の不安定化、人権問題などが生じる地政学リスク |
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事業遂行の過程で発生するリスク |
災害等の発生
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国内外の生産拠点、サプライチェーンが自然災害の被害を受けるリスク 火災や労働災害、環境事故などの不測の事態が生じるリスク |
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法規制等
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さまざまな国の法規制、変更・改正を遵守できないリスク |
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訴訟等
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事業の過程で訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となるリスク |
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製造物責任 |
製造物責任に基づく損害賠償請求を受けるリスク |
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為替変動
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製品販売、原材料調達等のさまざまな通貨を用いた取引において、為替レートの変動の影響を受けるリスク |
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情報漏洩 |
外部からのサイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、機密情報が流出するリスク |
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情報セキュリティ
王子グループは、事業活動に伴い獲得する情報を重要資産に位置付け、IT環境の高度化や、情報漏洩、不正アクセス、巧妙化するランサム被害等のサイバー脅威、自然災害に対応すべく、グループ全社で情報セキュリティの推進体制を整備しています。王子ビジネスセンターを情報システムリスク管理統括部門として、情報システムリスクに対するグループ横断的な点検を行い、情報セキュリティの維持管理と改善に取り組んでいます。また同部門内には、サイバーインシデントに即応する専門チームを設置し、最新のリスク動向を常に把握しつつ、インシデント発生時の支援や、計画的な対応施策の検討・提案、社内広報誌での啓蒙活動および情報発信、標的型メールに対する定期訓練などを実施しています。
最近ではクラウド利用の拡大、リモートワークの普及など働き方の変化や、改正個人情報保護法への対応として、規定の見直しを実施しています。引き続き施策の定着を図るとともに、高度化するサイバー犯罪に対抗するべく、情報セキュリティを強化していきます。

BCP
王子グループでは、事業遂行上の各リスクが発生した緊急時に対応するため、BCP※1をカンパニーごとに策定しています。また、適宜見直しを図りながら、BCM※2に取り組んでいます。
グループ全体で対応すべき重大な事案が発生した場合には、グループ緊急時対策本部を設置。従業員の安否確認や被災状況の把握、顧客企業への供給継続のための迅速な対応を図ります。
- ※1 BCP:Business Continuity Planの略称。災害や感染症などの緊急事態における事業継続計画。
- ※2 BCM:Business Continuity Managementの略称。事業継続計画の策定から、その導入・運用・見直しという継続的改善を含む、包括的・統合的な事業継続のため のマネジメント。
グループ防災体制の構築
当社グループでは、火災、地震、風水害などの災害等に備え、グループ防災事務局を常設。災害や事故などの報告ルールを定め、最新の情報を迅速に入手できる体制を整え、災害発生事例等をグループ内で速やかに共有し、 再発防止対策にも努めています。また、定期的な防災委員会の開催、安否確認システムを活用した大規模な安否確認訓練や各事業場における防災訓練の実施により、従業員の防災意識の向上と防災対策の強化に取り組んでいます。
リスクを分散する生産拠点の配置とフレキシブルな原材料調達
王子グループ各社は、北海道から九州まで全国各地に生産拠点を構えています。競争力強化のための生産拠点の集約化は進めつつ、一方で事業継続のためのリスク分散にも配慮しています。加えて、生産継続のために、複数社からの原材料調達を基本とし、産地が偏らないこと等、フレキシブルな調達を徹底しています。
インフラリスクの洗出しと対策の実施
地震、大雨、台風等の自然災害に対して、国内の王子グループの生産拠点では、各自治体のハザードマップ等を活用し、水害や土砂災害等の発生を想定し、リスクの洗出しとその対策を実施しています。一例として、長期間にわたる工場全停止を回避するため、電気室の防水対策を強化しています。また、有用な対策事例については、グループ内に積極的に水平展開しています。
地域の自然災害への備えと支援
近年、増加傾向にある自然災害に対して、グループ内の対策だけでなく、地域との連携を強化。現在、全国各地の自治体とグループ合計で163の防災協定を締結しています。災害発生時には段ボールベッドをはじめ、各種段ボール製品を提供するとともに、共同で避難所の設営訓練も行い、感染症対策までを含めた幅広い支援を行っています。
王子グループは、物流を支える段ボール、紙器製品をはじめ、ティシュ、トイレットロール、マスク等の衛生資材、情報を伝える印刷情報用紙など、世界各地において、社会生活を維持するための生産活動を継続してまいります。

