- 方針
- 体制
- サプライヤー・サステナビリティ調査
- 木材原料の調達指針に基づく責任ある調達の実施状況
- モニタリング
- クリーンウッド法への対応
- 持続可能なサプライチェーンの実現にむけたイニシアティブ参加
- データ
方針
昨今、経済のグローバル化や途上国の経済発展に伴う資源需要の増加を背景に、グローバルサプライチェーンにおける企業の社会的責任の遂行がますます重要になっております。王子グループは、原材料の調達に際し、環境や社会に配慮したサステナビリティ調達を拡充しています。「王子グループ ・サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」および「木材原料の調達指針」を各調達部門で共有し、新規サプライヤーには、取引に先立って当方針への理解を求めるとともに指針改定時には全てのサプライヤーに周知徹底を図り、当指針に基づく責任ある持続可能な調達を推進しています。
当指針には、(1)法令・社会規範の遵守と公正な取引及び腐敗防止(2)環境への配慮(気候変動への対応、環境負荷の削減、生物多様性の保全 他)(3)社会への配慮(人権尊重、適切な労働環境の確保 他)の国際的に重要性の高い理念に基づいて構成されています。
なお、人権・環境アセスメントなどを通じて、サステナビリティ行動指針への重大な違反等が確認された場合、サプライヤーとの対話や改善要請を行い、改善されないサプライヤーからの調達は行いません。
2024年2月26日改訂
王子グループ・サプライチェーン・サステナビリティ行動指針
王子ホールディングス株式会社
基本的な考え方
王子グループは「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」を定め、サプライヤーに対して当社の考え方を伝え、以下に定める項目への理解と実践を期待し、要請します。
取引先の皆様へのお願い
王子グループはサプライチェーンの取引先の皆様に下記項目の実行をお願いし、取引先の皆様とともに取り組みます。
また皆様のサプライチェーンにおいても同様の配慮をされることを期待します。
(1)法令・社会規範の遵守と公正な取引及び腐敗防止
- 関連する法令と国際条約などの遵守
- 公正な取引及び腐敗防止の徹底
- 製品及びサービス等の適正な品質の確保
(2)環境への配慮
事業活動において、地域社会と生物多様性・環境汚染・その他環境問題への影響に配慮し、エネルギー・水・その他資源の使用量、及び温室効果ガス・廃棄物の排出量の削減に努めるとともに森林保全等による二酸化炭素の持続的な炭素固定を推進する。
- 環境管理体制の強化
- 廃棄物の排出量削減と資源の有効活用
- 気候変動への対応
(省エネルギー等による温室効果ガス削減、森林保全等による二酸化炭素の吸収および持続的な炭素固定の推進) - 生物多様性の保全
- 環境負荷の削減
- 化学物質の管理
- 水資源の管理
(3)社会への配慮
- 人権を尊重し、差別・各種ハラスメント・体罰を含む虐待等の非人道的な扱いの禁止
- 従業員による強制労働・児童労働を禁止するとともに、最低就業年齢に満たない児童の雇用を禁止
- 雇用における性別、人種、宗教等による差別の禁止
- 法定最低賃金を超える賃金の保障
- 従業員の団結権及び団体交渉権の尊重
- 法定限度の労働時間を遵守し、長時間労働を防止
- 従業員に対する安全で衛生的かつ健康的な労働環境の確保
- サプライチェーンを含めた安全衛生の推進
- 地域・社会への貢献
(4)社会とのコミュニケーション
- ステークホルダーとのコミュニケーションによる信頼関係の構築
- 海外の文化・慣習の尊重
- 適切な情報の開示と保護
※ 「王子グループ・パートナーシップ調達方針」より「王子グループ・サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」へ名称変更
※この行動指針は王子グループが調達する全ての原材料を対象とします。木材原料については、別途「木材原料の調達指針」を定めています。
※環境や社会に配慮したサステナビリティ調達を効果的に推進するため、適宜モニタリングを実施します。
以上
王子グループ・サプライチェーン・サステナビリティ行動指針の翻訳
⽊材原料の調達指針
紙の原料となる木材は、持続可能な森林経営を行うことにより再生産が可能な、優れた資源です。また、森林資源は適正な管理と利用によって、二酸化炭素の吸収固定による地球温暖化防止、水資源の保全、生物多様性の保全等に貢献します。森林の管理と利用においては、森林破壊や違法伐採をせず、これらの環境的価値の維持・向上を図るとともに、人権の尊重、森林施業における労働者や伝統的権利の保護など、社会的責任も果たしていく必要があります。
王子グループは、責任ある原材料調達を実践するため、「王子グループ・サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」を制定し、さらに木材原料に対し「木材原料の調達指針(2005年制定)」を定め、原料の木質チップ・パルプの全てのサプライヤーから、当指針に基づく責任ある調達を推進します。さらに、人権問題や森林破壊等の社会的関心が高まる中、これら社会的課題に対応すべく、2023年3⽉に「木材原料の調達指針」を改訂し、以後も必要に応じて見直しを行っています。
同改訂指針は、日・英2つの言語で作成し、ウェブサイトに開示することにより、世界中のサプライヤーにその内容を伝達しています。
木材原料の調達指針(2024年改訂)
王子グループはすべてのサプライヤーに持続可能な木材原料を生産することを求め、検証します。特に、「トレーサビリティの確保および責任ある木材原料調達の実施」においては、以下の項目を実施します。
王子グループが調達する木材原料の全てのサプライヤーを対象に、下記の項目を継続的に調査し、原料のトレーサビリティを確保するとともに、適正に管理された森林より産出された原料のみを購入することで、責任ある調達を実施します。出所や森林管理状況が不明の木材、下記項目に適合しない木材は、サプライヤーとの対話・改善要請を行い、改善されないサプライヤーからの調達は行いません。
a. 原料の産地(伐採地域、森林所有形態、人工林・天然林の区別など)
b. 森林の管理方法(適用される森林法や森林管理規準など)
c. 森林認証の取得状況
d. 違法伐採による木材がないこと(森林認証、伐採許可証、原木の入荷記録等による確認)
e. 天然林から人工林または森林以外の土地利用に転換されている土地からの木材がないこと
f. 遺伝子組み換え材がないこと
g. 公的に保護価値が高いと認められた山林を伐採していないこと
h. 原料をめぐる重大な社会的紛争がないこと
i. 人権の擁護や労働者の権利保護に配慮していること
検証には森林認証制度のFSC®またはPEFCも活用します。
輸入木質チップの調査は船積みごとに実施します。引き取り単位が小さい国産木質チップおよびパルプの調査は年1回とします。
体制
サステナビリティ推進(ガバナンス)体制
サプライチェーンリスク(環境リスク、人権リスク 他)およびその対策に関する事項については、サステナビリティ推進委員会で審議し、取締役会が監視・監督します。サステナビリティ推進委員会には、主要な原材料調達を管轄する王子グリーンリソースを管掌する役員が参加し、委員会の協議事項には「8. サプライチェーンリスク、およびその対応に関する事項」が含まれています。
目標 | 主要サプライヤーのサステナビリティ調査の実施 |
---|---|
実績 | 古紙・パルプ・加工原紙・チップ・薬品・燃料(PKS、RPF他)・化石燃料・副資材(フィルム基材、インキ 他)に対するサステナビリティ調査の実施 |
サプライヤー・サステナビリティ調査
王子グループの事業・サプライチェーンがグローバル化する中、環境への配慮や労働環境・人権といったサステナビリティ要素をこれまで以上に重視し、その実態把握によるリスク管理と改善要請の実践、そのための調達活動が必要とされています。また、環境行動目標2030において、先の社会情勢を鑑み、企業の持続性、ステークホルダーからの信頼を継続していくため、『サプライヤーのリスク評価を通じ、法的遵守ならびに環境や社会に配慮した調達を行う』との内容を織り込むとともに、2020年度より主要サプライヤーを対象にアンケートによるサステナビリティ調査を行っています。また本調査および人権アセスメントなどを通じて、コンプライアンス違反等が確認された場合、サプライヤーとの対話や改善要請を行い、改善されない場合には、そのサプライヤーからの調達を停止いたします。
調査結果概要(2020年度~2023年度)
2023年度に王子グループが実施したサステナビリティ調査は、203社を対象に行われ、150社から回答を得ることができました。2020年度から2023年度までの総計では955社、回答サプライヤー数は702社、回答率は約74%です。ESG観点からの8項目を合計した全体の平均点は、475点(満点800点)で、得点率は約59%となりました。平均点の高い項目は「労働」で67点、平均点の低い項目は「コーポレートガバナンス」で53点でした。
また、2023年度の調査では、Dランクは19社、Eランクは16社となりました。

得点ランク | 基準 | 件数 |
---|---|---|
Sランク | 750以上 | 25 |
Aランク | 650以上750未満 | 53 |
Bランク | 500以上650未満 | 294 |
Cランク | 250以上500未満 | 224 |
Dランク | 100以上250未満 | 57 |
Eランク | 100未満 | 49 |
合計 | 800点満点 | 702 |
8項目の合計得点に応じてランク付け
ESG観点からの8項目
①コーポレートガバナンス ②人権 ③労働 ④環境 ⑤品質・安全性 ⑥サプライチェーンに対する基本姿勢 ⑦地域社会への共生 ⑧情報の開示・保護及び公正な企業活動
フォローアップおよび今後の取り組み
王子グループでは、サプライヤー・サステナビリティ調査の回答結果に基づいて、『王子グループ・サプライチェーン・サステナビリティ行動指針』に記載された項目の遵守と実行を促すための指導(フォローアップ)を行い、継続的な改善に努めています。 今後は回答率の向上を目指すとともに平均点を大幅に下回るサプライヤーに対しては、アセスメントを継続する予定です。また重点サプライヤー・クリティカルサプライヤーについては、人権DD/環境DDの対象として、段階的に取り組んでいく方針です。
購入原紙に含有される木材パルプ(原紙メーカー調達)に関するサステナビリティ調査(2022-2024年度)
2022年度には、これまで調査対象としていなかった購入原紙に含まれる木材パルプ(原紙メーカーが調達)に関する合法性の調査を実施しました。顧客指定原紙を除く531銘柄の中で、5銘柄の木材由来が不明でしたが2023年度より切替えを推進し、2024年5月までに全ての購入原紙について100%使用木材の合法性が確認された原紙に切り替わりました。
調査対象 | 銘柄数 | 割合 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
購入原紙 | 531 | 100% | 顧客指定原紙を除く | |
内訳 | 使用木材の合法性が確認できている原紙 | 531 | 100% | 森林認証を取得 |
使用木材の由来が不明な原紙 | 0 | - | 切替え完了 | |
その他原紙 | 39 | - | 顧客指定原紙 |
人権デュー・ディリジェンスの実施
王子グループは、取引のあるサプライヤーに対して、『責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料(経済産業省)』に準拠したリスク評価を行いました。人権リスクの特定には以下4つの視点から評価を実施しました。
- セクター・事業分野のリスク
- 製品・サービスのリスク
- 地域リスク
- 企業固有のリスク
この評価により、リスクが大きいと判断される62社のサプライヤーを特定し、これらの企業に対して優先的に人権デュー・ディリジェンスを実施しました。
実施の詳細については、王子ホールディングスの下記公開情報サイトをご覧ください。
木材原料の調達指針に基づく責任ある調達の実施状況
トレーサビリティレポートの確認
王子グループは、木材原料調達指針に基づき、木材の原産地や森林管理方法、違法伐採材や保護価値の高い森林由来の木材の混入有無、人権侵害の有無などの確認項目を定め、適正に管理された森林より生産された原料のみを調達しています。さらに、原産地の森林~チップ工場~パルプ・製紙工場の全工程を通して、木材原料の出所をさかのぼることが可能です。
当社は、木材原料の全てのサプライヤーに対し、木材原料に対するコンプライアンス違反を監視しており、その監査結果を開示しています。2023年度は、国内外チップ4,453千BDT(絶乾重量トン)、購入パルプ146千ADT(湿重量)の調達を行い、すべてのサプライヤー(国内外のチップサプライヤー 318社、国内外のパルプサプライヤー 22社)からトレーサビリティレポートを入手し(回収率100%)、「木材原料の調達指針に則った調達がなされていること」を、第三者機関の監査により確認しています。主要なチップ輸入国には王子グループ社員が駐在しており、船積み立会い、品質指導やサプライヤーとの業務打合せなどを行います。チップ船への船積みに際し、原料の出所、森林管理方法などを確認し、トレーサビリティレポートを作成します。特に合法性確認のため、サプライヤーに森林認証、伐採許可証、原木の入荷記録等の整備を確認します。国内チップについては国内主要個所に担当者を置いてサプライヤーとの業務打合せなどを行っています。定期的に、原料の出所、森林管理方法などを確認し、トレーサビリティレポートを作成します。
仮に、森林認証や木材原料の調達指針等の基準を満たさない事例が判明した場合、サプライヤーとの対話・改善要請を行い、改善されないサプライヤーからの調達を停止します。当該サプライヤーからの木材原料の調達を停止します。サプライヤーが満たすべき要件を認識し、認証基準と関連法令の遵守に取り組むことができるよう、関連情報の提供やベストプラクティス事例を用いた是正活動を継続的に行います。



モニタリング
王子グループでは、毎年、木材原料サプライヤーの工場や山林を訪問し、トレーサビリティレポートの根拠となる伐採許可書や関係書類の記録や保管状況を確認しています。また、労働者の権利を含む人権、安全衛生、環境への配慮の観点についても、現地視察やインタビュー等を通して、木材原料の調達指針の遵守状況をモニタリングしております。2023年度は、国内外のチップサプライヤー318社のうち、45社に現地訪問しました。モニタリングの結果、違反やリスクが検出された場合は、サプライヤーに是正を依頼し、改善に努めています。


ブラジル・CENIBRA社の林業奨励プログラム
1985年、CENIBRA社は地域の小規模農家を支援することを目的として林業奨励プログラムを開始しました。このプログラムでは、伐期に達した原木の購入を保証する契約を締結した上で、苗木や肥料などの資材や技術研修を提供し、地域農家が持続可能な森林経営を実践できるようにサポートしています。2023年には、計18,159haの植林地について、568名の地域農家と契約を継続しています。同年、CENIBRA社は、木材原料の約15%をプログラムに参加する地域農家から購入しており、CENIBRA社と地域農家との長期的なパートナーシップは、地域に雇用を創出し、所得や生活の質の向上、環境保全に貢献しています。
また、CENIBRA社は、契約林地の生育や管理の状況を確認するため、衛星画像を利用したモニタリングシステムを構築しました。このシステムは、自然生態系の転換や違法伐採の防止など、森林認証規格を含めた契約の遵守状況の確認に活用しています。モニタリングシステムのアラートにより、CENIBRA社担当者は適時に現地訪問し、サプライヤーと対話することができます。


クリーンウッド法への対応
王子グループは、2017年5月に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(通称:クリーンウッド法)※1で定める第一種、第二種登録木材関連事業者としての登録を、2018年3月に完了しました。木材原料やバイオマス燃料を調達するにあたり、日本製紙連合会と連携して合法証明デューディリジェンス※2を行い、合法性の確認を行ってまいります。
- ※1 同法は、我が国又は原産国の法令に適合して伐採された木材およびその製品の流通や利用を促進することを目的として、対象となる木材等や木材関連事業者の範囲、登録方法等とともに、木材関連事業者および国が取り組むべき措置についても定めており、国際的な問題である‘木材の違法伐採’を抑制するための法律です。
- ※2
合法証明デューディリジェンスとは、以下の3つのプロセスを経て、木材の違法リスクを最小化することです。
1. 樹種や伐採された国・地域、法令に基づく伐採証明書等の情報収集
2. 収集した情報に基づくリスク評価(初期リスク評価と詳細リスク評価)
3. 現地調査やサプライヤーの変更等を含むリスク緩和措置緩和措置を実施してもリスクが高いと判断される場合や、これらの措置が実施できない場合には、違法材であるリスクが高いので、購入を控えることになります。
持続可能なサプライチェーンの実現にむけたイニシアティブ参加
王子グループは持続可能なサプライチェーンの実現に向けて、サプライチェーンにおける企業の環境・社会関連の情報を評価、開示し、環境負荷低減等の改善を目指すプラットフォーム(CDP、EcoVadis、Sedex)に参加しています。